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【好きが仕事になった瞬間】おすそ分けみたいな仕事がしたい。(ルクア大阪トキメキ事業部 北野貴大)

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あの人と出会ったこと、あのちょっとした仕事を受けたこと。人生が変わるきっかけは、案外ひょんなことだったりします。
今思えば転機だった「好きが仕事になった瞬間」を紐解いて、好きと仕事のはざまに転がるエピソードや、肝となる出会いが生まれる過程や想いなどをコラムで伺うこの企画。
今回は大阪の商業施設「ルクア大阪」の北野貴大さんにご登場いただきます。トキメキ事業部というユニークな名前の部署で、
店舗やイベントなどの企画運営に従事する北野さんの「好きが仕事になった瞬間」を伺いました。(マルシェル運営)
 

「おせっかい」を通じて生まれる、血の通った仕事

「おせっかい」を通じて生まれる、血の通った仕事
近所の人気者だったあるおじちゃんが、当時、赤子だった私を抱えながら「こいつはすごい科学者になる。」と言い残し、数日後に死んでいきました。勝手なものです。ただ、すごい人気者だったおじちゃんの遺言みたいになってしまい、周囲の人も騒ぎ立て、当時0歳だった私も科学者としての自覚を……持つわけもなく今に至ります。

現在の私は、駅によくある商業施設を企画運営する仕事をしています。科学はしていません。
駅ビルを作り、ビームスさん、無印良品さん、ユニクロさん、マルシェ的なマーケットなどなど、お店さんに場所を貸したり、イベントを考えたりする仕事です。いわゆる不動産賃貸業という仕事です。いろんな商売をしている人が集まってお客さんを喜ばせようと切磋琢磨している、活気のある、あの場が好きです。
クリエイターのみなさまの中には、もしかしてご縁があった方もいるかもしれません。そして、これからご縁がある方がいるかもしれません。
ありがとうございます。そして、どうぞ、これからもよろしくお願いいたします。

そんな私は「おすそわけみたいな仕事がしたいなぁ」と思って働いています。

「卵もらいすぎてんけど、いる?」
「そんなわけないでしょ(笑)。ぜったいぼくたちのためにいっぱいもらってくれたんでしょー」
「そんな親切ちゃうよ(笑)。たまたまよ~」

大学時代は古い木造長屋を気に入り、そこに下宿していたもやしっ子の私は、よく隣のおばちゃんにおすそ分けをもらっていました。お互い無理のない範囲で、行われるやりとり。

実は、商業施設の企画運営もそんな気持ちでやっています。持っている駅ビルを我が物顔で、いばりちらかしているのではなく、「場所」をおすそ分けする気持ちで働いています。そして、おすそ分けは、ただ、物を譲る、貸すことではなく、半分は「おせっかい」で出来ていると感じています。
そしてそんなおせっかいを通じて生まれた仕事をやっているときが、生きてるなぁと感じたりします。
 

SNS用の似顔絵を描く「アイコンショップ」

SNS用の似顔絵を描く「アイコンショップ」
「インスタのアイコンがなかなか決まらない。」

ある女性から、ルクア大阪に寄せられたお悩みです。
ルクア大阪には日々、SNSを起点にお客様からお悩みが寄せられます。
私たちがおせっかいのヒントにしている大事な情報です。

一見すると、どうでもいい、見過ごされてしまうような小さなお悩みかもしれません。でも、見ないフリ、気付かないフリをしていくと、どんどん自分を見失ってしまうような気がして、私たちは真摯に向き合っています。

「よし、しっくりくるアイコンが手に入るお店を作ろう。」

そうして生まれたのが、「あなたのSNSのアイコンを描いてくれるアイコンショップ」です。
関西を中心に活躍している様々なテイストのイラストレーターさんたちと協働し、SNS用のお客様の似顔絵を描いてあげるお店を開催しました。
満員御礼で、お客様から「やっとアイコン問題から卒業できます」「自分のことがちょっと好きになりました」など感想をいただき、好評を博しました。
 

日常に心躍る時間を……マニアによる「大人の学校」

日常に心躍る時間を……マニアによる「大人の学校」
「仕事と家の往復。退屈でもないけど、あんまり驚くこともなくなった。」

こんな悩みも寄せられました。

同じ社会人として、とても共感しました。
不幸せな訳でもないんです。でもどこかで、感情が揺さぶられることを期待しているような。予定調和な日常に月に1回でもいいから、心躍る時間を持ちたいような。

おせっかいながら、仕事終わりにスパイスをお届けしたく、お店を考えました。

この時は、合同会社別視点さんが運営される「マニアフェスタ」というイベントに参加されている様々なマニアさんと協働し、マニアさんによる授業形式のイベント「大人の学校」を開催しました。
普段感じられないような好奇心を掻き立てるテーマを準備しました。「大喜利の答え方」「顔ハメパネルの魅力」「珍スポット入門」など。
こちらも満員御礼で、お客さまからは「自分も人生を楽しもうと思った」「生き方を広げてくれた」といった感想をいただき、好評を博しました。
 

お客様の小さなお悩みに、真摯に向き合う

お客様の小さなお悩みに、真摯に向き合う
つのイベントは「妄想ショップ」というプロジェクトで、お客様から寄せられた日々の小さな悩みを起点に、お店を妄想し、作ってしまうという仕組みになっています。
いわゆる、ただのおせっかいショップです。

平成から令和に移り、世の中はどんどん充実してきて「足りている」世界が広がっています。でも足りていないと感じる日々を埋められるのは、おせっかいだったりするのかなと思い、妄想ショップを立ち上げました。

死んでしまったおじちゃんの「こいつは科学者になる」というのも、ただのおせっかいだったかもしれませんが、私の人生の1エピソードとして、残っています。合理的に、経済的に生きる日々はある意味で、安定した豊かさの頂点かもしれませんが、今後は無意味で、必要ないかもしれない、おせっかいのような出来事が必要になってくるのではないかなぁと思ったりしています。
頼まれたことを頼まれた通りにする仕事も必要ですが、自主的にかけたおせっかいが喜ばれたとき、仕事になったとき、「生きてるなぁ」と実感したりします。

もちろん迷惑なおせっかいもありますが、そこはご愛嬌ということで。
 
■Profile:
JR西日本SC開発株式会社 ルクア大阪 トキメキ事業部 北野貴大
大阪市立大学大学院工学研究科都市系専攻建築計画分野卒。在学中は、大阪長屋でシェアハウス兼ゲストハウスを企画運営し、東日本大震災の復興活動などコミュニティマネジメントなどを経験。「トウキョウ建築コレクション2014」10選。2014年JR西日本SC開発株式会社に入社。天王寺ミオを経て、ルクア大阪で雑貨・コスメの店舗マネジメントやリーシングといった営業活動に従事。その後、販売促進を担当し、トキメキ事業部を発足。

▼トキメキ事業部
https://www.lucua.jp/tokimeki/
▼妄想ショップ
https://www.lucua.jp/mousou_shop/
▼アイコンショップ
https://www.lucua.jp/mousou_shop/icon_shop/
▼大人の学校
https://www.lucua.jp/mousou_shop/otona_school/