『マルシェルコラム』作品づくりの刺激になる記事を配信中!

専門書出版社の、本のつくりかた

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ハンドメイド作家さんに作品の作り方をご紹介いただくこのコーナー。
今回は少し趣向を変えて、京都にある専門書出版社・学芸出版社の編集者・神谷彬大さんにご協力いただき、書籍の企画から出版に至るまでの、本づくりの一連の流れを解説いたします。(マルシェル運営)

ステップ① 企画の検討

ステップ① 企画の検討
そのときどきで各編集者が面白い人やテーマを見つけてきて、どのような本をつくろうか考えながら、著者候補の方に打診をします。著者の見つけ方は様々ですが、SNSや他の著書で注目されていたり、別の著者の方にご紹介いただくこともあります。もちろん、企画を持ち込みいただく場合もあります。
以前はイベントの懇親会などで企画の話が盛り上がることも多かったのですが、最近はコロナの影響で機会が減っており、思い切ってメールなどでお声掛けするということが多くなっています。
個人的には、注目されている方はもちろん、発信が上手だったり、その分野で唯一の方だと思えると、お声掛けしやすいことが多いです。
 

ステップ② 企画会議

ステップ② 企画会議
弊社では2週間に1回行います。決裁をめざし、喧々諤々の議論が行われます。議論のポイントとして、内容がしっかり読者に伝わる目次構成になっているかや、読者対象に対してぶれていないか、そのテーマの話題性、コストとの兼ね合いや類書の動向、といったことを見極めながら検討していきます。
最近では新しいジャンルに挑戦する本も多いので、リスクも考えつつ、魅力を十分伝えるものになるよう会議での意見を取り入れていきます。
 

ステップ③ 執筆の進め方

ステップ③ 執筆の進め方
企画決裁となったら、著者の方に執筆を進めていただきます。草稿をいただいたら、しっかりと拝読させていただき、脱稿までのブラッシュアップを著者の方と進めていきます。
本によりますが、たとえば企画会議から1年後くらいの発行を目標にする場合は、約半年後の脱稿を目指す、というようなスケジュールになります。
最初に齟齬があるまま進めてしまって大幅に書き直しをしていただくことになったり、少し連絡を怠っているうちに立ち消えになってしまったり……ということがないよう、小まめなやりとりをするように心がけています。研究費や営業上の関係で発行期日が厳密に決まっている場合は、特に計画的に取り組むことが必要になります。
 

ステップ④ 見本紙面の検討

ステップ④ 見本紙面の検討
執筆前、あるいは執筆と並行して、紙面デザインの検討を行います。図面や写真をふんだんに使った本も多いため、どのように見せれば読者に効果的に伝わるかをよく考えていきます。
 

ステップ⑤ ゲラの送付

ステップ⑤ ゲラの送付
脱稿した文章や図版を組版し、ゲラ(校正紙)を作成します。紙面にしてみて気になる部分や、さらに修正すべき点があれば、ご提案やご質問などのコメントを入れていきます。
 

ステップ⑥ 販促会議

発行にあたり、書名や定価などを最終決定していきます。書名については特に、シンプルかつ狙っている読者対象にきちんと伝わるものになるよう、色々な意見が出ます。学術書・実務書が多いので、あまり抽象的にならず、誤解を生まず、説明的すぎず……と、条件を満たした書名にするのには頭を悩ませます。
また、この段階でネット書店さんでの予約注文を開始したり、営業を始めることが多いです。その名の通り販売促進のための会議なので、宣伝の仕方、フェアやイベントなど、多くの方に届けるための作戦を練っていきます。
 

ステップ⑦ カバーデザインの決定

ステップ⑦ カバーデザインの決定
読者の目を引き、かつ内容を適切に表すデザインを、デザイナーさんとともに考えていきます。本全体の印象が決まるため、著者さんとも議論が盛り上がります。ネット書店でも表紙のデザインがあるのとないのでは、まったく印象が違います。
この段階に来ると、本文用紙を選ぶ、必要に応じて色校正を取る、販促の方法を考えるなど、色々なことが同時並行で一気に進み、スピード感が出てきます。コストの制約がある中で効果的な方法を探ったりと、プロダクトとしての本づくりを一番意識する段階でもあります。
 

ステップ⑧ 印刷所入稿

ステップ⑧ 印刷所入稿
いよいよ印刷所に入稿します。入稿すれば少し落ち着きますが、イベントや献本、ポップの準備など意外とやることが尽きなかったりします。無事本が完成するか、緊張しながら待つ日々です。
 

ステップ⑨ 完成後

ステップ⑨ 完成後
少しでも多くの方に届けられるよう、イベントやフェアなどを仕掛けていきます。加えて、弊社で運営しているウェブメディア「まち座」(https://book.gakugei-pub.co.jp/)で、さまざまな角度からの関連情報を発信して、相乗効果を高めています。
近年は、SNSで思いもよらない反響があったりするので、発行前から連載記事などで期待度を高めていったり、著者の方々に小まめに発信していただいたりと、試行錯誤を続けています。読者の感想は著者さんにも私たちにも最も嬉しいもので、毎日エゴサーチしてしまうことも。お読みいただいた本のご感想は、どしどしお寄せください!
 
■Profile:
神谷彬大(かみやあきひろ)
1989年群馬県生まれ。2015年学芸出版社に入社。建築法規や都市計画、色彩、観光まちづくりなどの書籍の企画・編集を担当。これまでの担当書籍に『事例と図でわかる
建物改修・活用のための建築法規』『色彩の手帳』『ストリートファイト』など。

*京都にある学芸出版社では、建築・まちづくり・デザインに関する専門書を中心に出版しています。
本記事では、弊社(専門書出版社)での本づくりの流れの一例をお示ししています。本によって、また出版社の特徴によって、かなり違う場合もあることをご了承ください。

HP http://www.gakugei-pub.jp/