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あのマンガ効果で和柄がヒット! 金彩加工の京都伝統工芸作家が新たな世界をプロデュース

―見出し
マルシェル1周年記念としてはじまりました、注目のクリエイターズインタビュー。
今回は、京都の伝統工芸「京友禅金彩工芸(きょうゆうぜんきんさいこうげい)」を現代風にアレンジし商品開発と制作、販売を行っている上仲昭浩(うえなかあきひろ)さんです。 活動のきっかけや制作に対する想い、販売する商品についてお話をうかがいました。

――「二鶴工芸(ふづるこうげい)」という屋号は、和や京を感じられるお名前ですね。由来を教えていただけますか。

――「二鶴工芸(ふづるこうげい)」という屋号は、和や京を感じられるお名前ですね。由来を教えていただけますか。
両親が京都府南丹市(なんたんし)の美山町鶴ヶ岡という地区の出身なんです。父が呉服金彩加工の職人として独立したとき、鶴ヶ岡に由来する二人を鶴にみたて工房にその名前をつけました。私はその二代目です。マルシェルでは工房の名を活動名にしています。

現在は京都市内のこの工房で本業である着物の金彩加工をするかたわら、オリジナル商品の制作をしています。

――本業の呉服金彩加工の道には、ご両親の影響から入られたのですね。

影響というより、高校を卒業するころにはレールが敷かれていて……何の疑いもなくその道に進みました。修行先の工房も決められていて、その後7年間修行しました。

――金箔を貼るシーンはテレビなどの映像でおなじみですが、実際はどのような世界なのでしょう?

――金箔を貼るシーンはテレビなどの映像でおなじみですが、実際はどのような世界なのでしょう?
京都の友禅染着物はその特徴として、制作のおおよそ18から20工程を分業で行っています。友禅の染め作業が完了した後、分業のほぼ最後の工程で金彩加工が行われます。最後のお化粧のようなものですね。


――商品の金箔部分にもさまざまな技法が施されています。加工の手法は何通りほどあるのでしょうか?

――商品の金箔部分にもさまざまな技法が施されています。加工の手法は何通りほどあるのでしょうか?
バリエーションは伝えきれないほどあります。
代表的なものは、皆さんが比較的よく目にする、紋様に金箔を貼るもの。「くくり」といって、友禅で染め上がった紋様の輪郭を金線で描くもの。「振り砂子(ふりすなご)」といって、金箔を入れた竹の筒から網目を通して細かい金箔を振るい落とすもの。
この3つの技術が代表的で、その技術が派生し現在の多様な加工方法を開発されている感じです。
技術開発に腐心された先達のおかげです。

――「開発されている」ということは、今もなおその手法は増えているのですか?

そうです。使われる材料にも劣化しにくい素材が出たりと、着物の伝統工芸も日々進化しています。ただ、その担い手は減っています。

――見た目も艶やかで、魅力ある世界だと思うのですが……。

――見た目も艶やかで、魅力ある世界だと思うのですが……。

作っているものは華やかですが、修行中は先輩についていくことで必死でしたね。
金彩加工は各工房独自の手法を大切にしているので、箔の種類や糊(接着剤)のブレンド方法などもさまざまです。修行中は、両親からアドバイスをもらうこともできませんでした。

――伝統工芸ならではの、習得の難しさがあるのですね。

ただ作業の中でうれしさを感じることもあります。スムーズに作業が進み着物と上手く調和され品よく仕上がった時です。なかなか100点満点とはいかないですけどね。

あとは箔の光沢を調節できることも、作り手としてもおもしろさを感じる部分です。金箔を重ねて艶を出す方法もありますが、反対に渋く見せる加工法もあります。私はそれほど加飾せず渋めに魅せることが好みです。

――そのような技法をオリジナル商品にも活かしているのですね。商品開発にはどのように至ったのでしょうか?

私が修行していたのは、ちょうどバブル経済の終わりのころです。伝統工芸も今よりは勢いのある時代でしたが、4年目ぐらいにこの道では食べていけなくなるのではという危機感を抱くようになりました。そのころから工房には内緒で商品開発をはじめました。

独立後、本業と並行して商品開発も進めていきましたが、当時は変わり者と揶揄されることもありました。もう20年以上前のことですからね……。今は、伝統工芸の分野もそれぞれの技術を活かした商品開発というものは珍しくなく、他の業界でも当たり前の時代になりました。

――実際にネットで販売されて、お客さまと直接のコミュニケーションが生まれたと思いますが、何か変化はありましたか?

――実際にネットで販売されて、お客さまと直接のコミュニケーションが生まれたと思いますが、何か変化はありましたか?
「こうしたほうがよいのでは」といったご意見はいただきますね。できる範囲で対応してみたり、参考になることも多々あります。
オーダーもいただきますが、「自分が欲しいもの・作りたいもの」という基本的な部分は変わっていません。
若い時は、「そんなのできるか!」という態度だったこともあるのですが、年齢を重ねてくると柔軟になるものですね。色々な経験で引き出しが増えていったわけです。

――ご自身の変化もあったということですね(笑)。

年とともに、とげがなくなっていきました(笑)。購入してくださったお客様から「気に入った!」とコメントをいただいたり、リピート購入してくださったり、うれしい限りです。

――お客様の層は、どのような方が多いですか? 和のテイストとドクロのキャラクターをかけ合わせた商品があったり、若い方もいらっしゃるのかと思いましたが。

メインの層は40代より上です。以前は男性物メインでやっていましたが、今のお客さんの半分は実は女性です。女性は30代以上の方が多いです。

コロナの影響でネット販売を盛り上げようとブログの投稿を増やしたり、ある商品がネットでバズったりしたことで、アクセス数や購入数が増えました。それもあり、少し商品開発に関する考え方が変わりつつあります。

――ネットで話題になった商品はどちらになりますか?

――バズった商品はどちらになりますか?
マルチに使っていただける道中財布です。10年以上販売しているロングセラー品でおすすめ商品です。
麻の葉柄のものがいちばんご好評いただきました。この道中財布などの小物類はお手ごろ価格なこともあり売れ行きがよく、今や看板商品になりましたね。

仕立てやディテールを妥協しないスタイルで制作しているので、全体の商品構成としては比較的高価なものが多いかもしれません。

――ブログのフォロワーや記事に対する"いいね"も多いですね。一定層のファンがいらっしゃるように見えます。

――バズった商品はどちらになりますか?
ブログは午前一回の配信だったのを3、4時間毎に配信するようにしていたら、フォロワーやいいねが徐々に増えてきました。2、3日投稿しないと、「何かあったのか」と心配の投稿をしてくれる方もいるほどです。

――商品の土台となる、お皿や財布の本体なども制作しているのでしょうか?

―
長年お付き合いしている業者さんや職人さんに発注しています。こちらのわがままなオーダーをいつも聞いていただいています。

――呉服金彩加工や伝統工芸の世界は今後どうなっていけばよいと思いますか?


どの業界もそうだと思いますが、消費者の開拓をして裾野を広げていくことが大切だと思います。特に着物は着てもらうことで価値が生まれますからね。世の中がもっと着物を着たいという雰囲気になってほしいです。今は成人式や夏祭りに浴衣を着るぐらいなので、他のイベントなどに着て出かける機会があるとよいですね。

ファッションとして着物を着る若い方についてですが、ちゃんと着付けしないといけないシーンではきちっと着ないといけないですが、遊びに行くようなカジュアルなシーンでは多少着方が変でも、あたたかい目で「着たいという想い」を尊重してあげてほしいです。
将来の着物ユーザーまたは日本の文化を担う人材になる可能性があるわけですし。

京都に観光で来る方も着物をレンタルで楽しまれる方が増えています。そういった方の中から「もう少し高級なものを着たい」というニーズが生まれる可能性があると思います。
わずかなニーズでも積もり積もればそれなりの市場になっていきますので、市場の芽をつぶさずに、しっかり金彩工芸という仕事を伝えていく必要があると思っています。

――観光地としては世界でも有数の名所といえる京都なので、うまく転換していくとよいですね。最後にこれから作家として活動しようと思っている方にアドバイスをいただけますか?

―
売るというとビジネスの面を真っ先に考えてしまうかもしれません。
当然です。でもそれよりまずは作り手として「自分が欲しいと思うもの、作りたいと思うもの」を作るというのが原点になるのではないでしょうか。
そしてそれを友人など第三者にプレゼントして、喜んでいただけるものを作っているか!?と自問することも大切です。お客様に喜んでいただくことで自信やモチベーション維持につながって続いていくのかなと思います。もちろん売れたときが一番気分は高揚しますが。(笑)
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■Profile:
上仲昭浩
屋号:二鶴工芸(ふづるこうげい)
京都府・京都市出身。京都市内で呉服金彩加工(ごふくきんさいかこう)の職人として従事しながら、金彩加工を現代風に活かした商品開発と制作、販売を行っている。

▶ブログ:https://blog.goo.ne.jp/hudurukougei
▶マルシェル出品一覧:https://marchel.goo.ne.jp/hudurukougei