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若手女性伝統工芸職人グループ「凛九」メンバーが語る!「伝統工芸職人」と「母」の両立

伝統工芸職人と母の両立
伝統工芸の最前線で活躍する女性職人グループ「凛九」のメンバーに、さまざまなテーマでお話をうかがう対談企画。第4弾は「子育てしながらの職人生活」です。

伝統工芸の仕事は、技術だけではなく集中力の継続や時間の確保が必要。そんな作業現場に、子どもに精一杯の愛情を注ぐ「母」としての一面をもつ職人がいます。そこには、どのような難しさや楽しさがあるのでしょうか。伊勢一刀彫(いせいっとうぼり)職人の太田結衣さん、有松鳴海絞り(ありまつなるみしぼり)くくり職人の大須賀彩さんに、職人と育児の両立や、母目線から取り組む伝統工芸について、お聞きしました。

――はじめに、おふたりの活動内容と職人になったきっかけを教えてください。

太田:宮大工が端材で縁起物を彫ったことからはじまる、三重県の伝統工芸品「伊勢一刀彫」の職人をしています。美術大学在学中に「木を扱う仕事に関わりたい」という気持ちが芽生え、地元伊勢の「えと守(えとまもり)」を思い出したことがきっかけです。2010年に岸川行輝師に弟子入りし、1年目から制作、販売に携わらせていただきました。
――はじめに、おふたりの活動内容と職人になったきっかけを教えてください。


大須賀:私は「有松鳴海絞り」という、愛知県の有松、鳴海地域に江戸時代から続く「絞り染め」のくくり職人をしています。もともと服飾に興味があり、服や生地について学んでいました。大学の「絞り染め」の授業でそのおもしろさに魅了され、2006年に有松鳴海絞りのブランド「suzusan」の村瀬裕氏に弟子入りしました。その後「山上商店」でも学び、計10年の修行を経て、現在はアトリエ「彩 Aya Irodori」を構えています。
――はじめに、おふたりの活動内容と職人になったきっかけを教えてください。

――おふたりは違った伝統工芸の職人をされながら、同世代の女性職人グループ「凛九」に参加されていますが、参加した当時はどのような心境でしたか?

太田:三重の若手職人グループ「常若」で「凛九」のメンバーと既に知り合っていたので、不安は少なかったです。「伊勢一刀彫が広まる一助になれば」という思いで加入しました。「女性職人のグループを作る」という新しい視点にも魅力を感じていましたね。

大須賀:私は当時独立したばかりで、挫折していた時期でした。心が折れかけていた頃、「凛九」に関するSNSの投稿を見かけました。「自分も入れたらいいな」と思っていたところで梶浦明日香さん(伊勢根付職人/「凛九」リーダー)から連絡をもらい、すごくうれしかったです。同じ境遇の女性職人が多くいることを知れたのも収穫でした。

――太田さんは0歳と2歳、大須賀さんは3歳になるお子さんがいらっしゃいます。職人として仕事をしつつ、子育てにも励む生活はどのようなものなのでしょうか?

――太田さんは0歳と2歳、大須賀さんは3歳になるお子さんがいらっしゃいます。職人として仕事をしつつ、子育てにも励む生活はどのようなものなのでしょうか?
太田:大変です!(笑) ですが、一刀彫職人の仕事は子育てするのにメリットもありました。子どもが体調を崩しやすいのですが、保育園を休まなければいけない時などは自分でスケジュールを調整できます。複数人で働く環境では「同僚に迷惑がかかるのでは……」という心配がありますが、一人でしている分、臨機応変に動きやすいです。その分のしわ寄せが後で来て納期まで追いつめられるのは自分なのですが(笑)。彩さんはどうですか?

大須賀:私の場合は薬品を使うので、子育てをしながら自宅で作業ができません。アトリエを構える前は娘が寝てから夜中に作業をしていたのですが、体力的に限界を感じて……。今はアトリエがあるので、仕事場と生活の場を両立できるベストな環境になりました。作品のためにも子どものためにも、「職人モード」と「母モード」との切り替えは大切です。アトリエは夫の協力のおかげで完成しました。本当に感謝しています。
――太田さんは0歳と2歳、大須賀さんは3歳になるお子さんがいらっしゃいます。職人として仕事をしつつ、子育てにも励む生活はどのようなものなのでしょうか?
――育児をしながらの「ものづくり」はどのあたりが特に大変ですか?

太田:「ながら」作業は子どもにも、刃物を使う私にとっても危険です。保育園へ預けるまでは、私・子ども・私の祖母が作業部屋にいる状況でした。祖母には感謝の言葉しかありませんが、集中したくても中々に難しかったです。
「子どもの寝かしつけ後になら集中できるかな」と作業を始めても、夜泣きで中断したり…。仕事の効率や体力の面ではやはり大変です。私の場合、公私のメリハリをつけるのもとても難しいと感じました。

今は、安心して預けられる保育士さんがいるおかげで日中は集中して仕事に取り組め、とても感謝しています。
――太田さんは0歳と2歳、大須賀さんは3歳になるお子さんがいらっしゃいます。職人として仕事をしつつ、子育てにも励む生活はどのようなものなのでしょうか?
大須賀:伝統工芸は工程が多いこともあり、まとまった時間がないと作業ができません。工程ごとに区切るのが難しく、一気に仕上げたいこともあります。有松鳴海絞りの場合、染色中は手が離せないので「子どもへの対応が遅れてしまうのでは」という懸念もあったり……。母の協力もあったので、なんとかやってこれました。これからは子どもが「ママを独占したい」という年頃になるので、より大変になるのでは……と心配しています(笑)。

太田:子どもに甘えられると「かまってあげたい」と思う反面、「作業もしたい……」という葛藤を抱きますよね。ただ、子どもに癒されることもあります。先日息子がほうきを持って来て、作業場の木くずを掃いてくれました(笑)。

大須賀:頼もしいですね。うちの娘も糸を使って遊んでいることがあります。母親としては「ヒヤッ」とすることもあるのですが(笑)。いつか一緒に絞り染めをやってくれるようになったらうれしいです。
――子育てを経験してから、職人としての姿勢は変わりましたか?

――子育てを経験してから、職人としての姿勢は変わりましたか?

太田:子育てを経験するから見えてくるものがあると感じています。作品作りでも、「これは角を落とした方が赤ちゃんがなめても安全だな」などと気付いたりします。「乳幼児が遊べるおもちゃを作りたい」と思うようにもなりました。
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大須賀:子どもが身近にいないと気付けないような、細かな部分があるのかもしれないですね。今まで見えてこなかったお客さまのニーズにも気付けるようになり、制作の視点や取り組み方が変わりました。結衣さんと同じく、「子どもにも優しい作品を提案できたらよいな」と思っています。

――職人と子育てを両立する中で、印象に残っているエピソードはありますか?

太田:子どもが生まれたばかりの頃、 横浜でどうしても参加したいイベントがありました。まだ授乳期だったので、主人が授乳の時間にホテルと会場を何度も往復して子どもを連れてきてくれました。あれは主人の協力がないと成し遂げられなかったです。
――子育てを経験してから、職人としての姿勢は変わりましたか?
凛九メンバーにも子どもを抱っこしてもらってかわいがってもらったり、会場の方には授乳しやすいようにと近くに小部屋を設けてもらったり、みんなに助けてもらいました。子育てしながらでも働ける環境を周りのみんなに協力してもらっているから今があります。本当に感謝です!
大須賀:近くで見ていて「結衣さんすごい!」と本当に驚きました。私は生まれてくる娘のために、藍染めのよだれ掛けなどを制作しました。妊娠中は体力的にも大変で、「踏み」の工程などは夫に代わりにやってもらいました。そのおかげでとても素敵な仕上がりになり、娘にもよいプレゼントになったと思います。
――子育てを経験してから、職人としての姿勢は変わりましたか?

――心温まるエピソードですね。旦那様の手厚いサポートも素敵です。置かれている環境が似ているおふたりですが、お互いの尊敬できる部分を教えてください。

大須賀:結衣さんは、「凛九」でも頼りになる存在です。2人の育児だけでも大変なのに、グループのためにもしっかり動いてくれます。私は自分だけでいっぱいいっぱいになってしまいがちなので、とても尊敬します。作品も温かみがあって大好きです。私も「こんな作品づくりができたらよいな」といつも思っていますね。

太田:ありがとうございます。彩さんからはいつも「パワフルさ」を感じています。ものづくりにに対する集中力もさることながら、大学での講師など、発信する活動にも力を入れています。私はどちらかというと内にこもるタイプなので、彩さんの姿を見ると「自分も頑張らなきゃ!」と思えます。

大須賀:うれしい言葉をありがとうございます。私の場合、突っ走りすぎてコケることも多いんです(笑)。

太田:彩さんは失敗しても、それを表に出さないんです。ほとんど弱音を吐かないので、人としてもとても尊敬します。私たちの前では「もっと弱音を吐いてもいいんだよ」と言ってあげたいですね。作品では、細かな部分に気を配っているのが伝わってきます。最近私も「ボレロ」を購入させてもらいました。本当にきれいな作品で、身に着けるのが楽しみです。
――心温まるエピソードですね。旦那様の手厚いサポートも素敵です。置かれている環境が似ているおふたりですが、お互いの尊敬できる部分を教えてください。

――マルシェルに参加してみて、どのような変化がありましたか。

太田:ブログを書くようになり、メンバーの状況や現在の取り組みを知れるようになったことは大きいです。グループの人数が多いので、メッセージのやりとりではどうしてもすべてに目を通せないことがあります。ブログなら落ち着いて読めるので、お互いの理解が深まったなと感じますね。

大須賀:それぞれの工芸に関する「いわれ」や歴史、作業に使う道具など、背景を詳しく知ることができ勉強にもなりますね。

――最後に、今後の取り組みについて教えてください。

――最後に、今後の取り組みについて教えてください。
太田:現在、「アロマ」の製品化を進めています。一刀彫では「楠(くすのき)」を多く用いるのですが、お客さまから「いい香り」といってもらうことが多いのです。木くずや作品には使えないサイズの木端など、今までは廃棄せざるを得なかった部分を何かに使えたらと思案していました。数年前、「アロマディッシュ」を販売したことがあるので、それを応用して製品化したいと思っています。

大須賀:私は親子で身に着けられる絞りのアイテムを作りたいと考えています。伝統工芸でおそろいのアイテムは意外と少ないのです。とくにお母さんも身に着けられる渋くて素敵なものが少ないので、そういったものを作りたいです。

太田:それはうれしいです! 親子で工芸品を身に着けられたら素敵ですね。

大須賀:子どもはすぐに成長するので、年齢に合わせたシャツや帽子なども提案していけたらよいですね。汗をかきやすいから薄手にしたり、ポケットの位置をこだわったり、子育ての経験もどんどん活かしていきたいです。
――最後に、今後の取り組みについて教えてください。

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