『マルシェルコラム』作品づくりの刺激になる記事を配信中!

バッグにもキャラクターがある!? “クスっと笑えるバック”で伝えるオリジナリティと自然への想い

―みだし
マルシェル1周年記念としてはじまりました、注目のクリエイターズインタビュー。今回は、動物をモチーフに"人を笑顔にするバッグ"を制作されている蓬莱美紀(ほうらいみき)さんです。

活動のきっかけや作品に込める想い、今後の展望などについてお話をうかがいました。

――「ashの森へようこそ」という活動名があたたかい雰囲気で特徴的ですね。由来を教えていただけますか?

――「ashの森へようこそ」という活動名があたたかい雰囲気で特徴的ですね。由来を教えていただけますか?
「ash(アッシュ)」は名字「蓬莱」のイニシャル「H」をフランス語読みにしたものです。制作活動を通して誰かの役に立てたら……と思っていたところ、奥多摩での森を守る運動のことを知り、そのお手伝いをさせていただくようになりこの活動名にしました。お呼びいただく際は「ash」で大丈夫ですよ。

――ではashさん、森を守る運動に興味をもったきっかけは何だったのでしょうか?

以前アパレル業界で働いていたときに、膨大な量の生地の廃棄が問題視されていることを肌で感じていました。その頃から環境問題に関心をもちはじめましたが、実際はなかなか森などへ出向き運動に参加することができませんでした。そこで、作品の売上の一部を活動団体へ寄付するようになったんです。

2019年から2020年には、オーストラリアの森林火災でたくさんの野生動物が焼け死んでしまいましたよね。少しでも私がモチーフにしている動物達の力になれれば……という想いで、昨年はコアラ基金に寄付をしました。


――素晴らしい取り組みですね。ashさんの作品からも動物たちへの愛情を感じます。バッグデザイナーとして活動されるまでの経緯を教えていただけますか?

――素晴らしい取り組みですね。ashさんの作品からも動物たちへの愛情を感じます。バッグデザイナーとして活動されるまでの経緯を教えていただけますか?
もともと彫金師としてジュエリーを制作、販売していました。彫金教室も主催していましたが、バーナーを使用するためのプロパンガスを家に置く必要があり……育児をしながらでは危険なため、出産を機に泣く泣くお休みすることにしました。

その後、夫の海外転勤のため家族で中国へ引っ越しました。その頃から現地の布を材料にバッグなどを作るようになりました。活動をはじめて10年ほどになります。

――彫金師からバッグデザイナーへ転身されたのですね。中国でバッグを制作されるようになったきっかけは何だったのでしょうか?

当初は彫金を再開するつもりで、中国にも道具を持っていきました。ところが中国天津(てんしん)の布市場で色鮮やかな生地を目にし、色彩の魅力に目覚めてしまったのです。天津はプリント生地の生産が盛んで、華やかでポップな色とりどりの生地が手軽に手に入ります。それらを目にして「なんてキレイなんだろう!」と感激しました。

彫金は鋼(はがね)や石など限られた素材を使うので、色彩を楽しむというよりデザインが勝負の世界です。その反動もあったかもしれませんね。さまざまなプリント生地を買い、組み合わせてパッチワークにしているうちにバッグの形になり……。最初は自分自身や友人のために作っていましたが、飽きたらなくなり販売することにしました。

――ashさんの作品は刺しゅうも多く施されていますが、どのように修得されたのですか?

――ashさんの作品は刺しゅうも多く施されていますが、どのように修得されたのですか?
すべて独学です。イメージをふくらませて、頭にあるデザインを形にします。その作業が想像以上に困難なこともありたまにくじけそうになりますが、キュートな動物をモチーフにひとつひとつ丁寧に制作しています。

たとえば動物の毛並みを刺しゅうするときは、糸の色や本数を変えながら立体感や陰影を表現します。動物以外の部分にも、ビーズやボタンなどを使ってアクセントをつけたり、バックの内側にも表面と異なる布や素材をコーディネートしたりと、つい細部にまでこだわってしまいます。

――とても手の込んだつくりになっているのですね。

バッグの中には「笑顔のもとになりますように」という気持ちを込めて、モチーフにした動物の名前やキャラクターを設定した手書きのプロフィールカードを入れているんですよ。

――それは、オンリーワンの特典ですね。カードの詳細をうかがいたいところですが、ご購入されたお客様だけの"届いてからのお楽しみ"ですね。

作品のモチーフになっている動物の表情やしぐさなどから、思わず「クスっ」と笑っていただけそうな性格や行動、くせ、好みなどを設定しています。決してポジティブな内容ばかりではなく、皆さんに「こういう人いるよね」とか「こういうことあるよね」と共感していただけるようなものが多いかもしれません。

お客様はそのような意図をくみ取ってくださる方が多いです。たとえば「みほこちゃん」と名付けたモチーフのバッグをお買い上げいただいたお客様から、「みほこちゃん、元気よ」と"近況報告"をいただくこともあるんです。愛情を込めて大切にしてくださっていることが感じられ、とてもうれしくなります。

――ashさんのお気持ちはきちんと伝わっていますね。ほかにも何か印象的なエピソードはありますか?

――ashさんのお気持ちはきちんと伝わっていますね。ほかにも何か印象的なエピソードはありますか?
ハンドメイドのイベントに出店した際「見たことある」という反応をいただき、周知されはじめたようでうれしくなりました。すべてオリジナルデザインなので、お買い上げいただいた方から「かわいい」「ほかにないデザイン」と言っていただけるのも大変励みになります。

昨年には渋谷ヒカリエや小田急百貨店で、オリジナルのマスクを販売しました。自分でも驚くほどたくさんの方にご購入いただき、とても好評だったこともうれしい出来事でしたね。

――次の活動への原動力になりますね。

実は以前デザインをまねされてしまったことがあるんです。ブログやイベントで作品を公開しているので、ある程度は仕方のないことだと思いますが……バッグの表面だけでなく内側まで同じデザインで、とても悲しい気持ちになりました。それ以来、誰にもまねできないようなものを作ると心に決め、現在のような動物モチーフのバッグを制作するようになったのです。

――悔しいご経験をバネに、今のスタイルが確立されたのですね。活動を続けるコツはあるのでしょうか?

「これが私の最後の作品!」と思えるほど満足できるものが制作できたら、作家として「もう思い残すことはない」と思えるのかもしれません。でも、ものづくりをする人にそんなときは永遠に訪れないと感じています。

常に反省して「次はこうしよう」と思いますし、自然や人、音楽、街……いろいろなものを見るたびにインスパイアされ、新しいアイデアが湧いてきます。

――今イチオシの商品を教えてください。

――今イチオシの商品を教えてください。
マルシェルに出品している「肩に掛けられるたまごバッグ」や、ブログに投稿している「"顔ばば~ん"猫さんトートバッグ」「プラスチックがま口バッグ」です。

中でも、うさぎやペンギンをモチーフにした「プラスチックがま口バッグ」はストーリー性を重視しています。うさぎのデザインのものは、チアガールをしているうざぎちゃんのアップリケを施しています。スカート部分には布を重ねてギャザーを寄せてあり、ドキドキしながらスカートをめくるとかわいらしいピンクのパンツを履いている仕掛けです。

ペンギンくんバージョンは、麦わら帽子をかぶりバーベキューを満喫している様子をアップリケにしています。ポケットの中にはピーマンだけ残した串が入っていて……「ピーマンが苦手なんだね!」と思わず笑みがこぼれる仕掛けです。

――"オチ"まであって物語が完結しているので、「そういうことか!」と笑顔になりますね。

――
生きていると悩んだり傷ついたり、ネガティブな気持ちになることもたくさんありますよね。私のバッグを選んでくださった方には、少しでも笑って元気になっていただきたいと思っています。

――今後の目標はありますか?

これまで以上に販売にも力を入れていきたいです。デザインやコンセプトを考えたり、作ることに比重が傾きすぎてしまう傾向があるので……。今後もイベントやSNSなどを活用しながら、皆さんに楽しんでいただけるような作品を制作、販売し続けていきたいですね。委託販売をしてくださるお店や、催事のご依頼もお待ちしています!

――制作と販売のバランスは難しいですね。制作に比重がかかってしまうと、価格設定も難しいのではないでしょうか。

デザインやつくりにこだわっているので、どうしても価格が高くなってしまいます。ですが、装飾を少し減らしポケットを増やして機能性を重視したり、ミシンを使った機械刺しゅうを加え材料費や工数をおさえたりして、価格は下げられるかもしれないと考えています。

機能性や価格面でバリエーションをつけられたらお客様の幅も広がるので、そういったことも追求していきたいですね。とはいえ、やはり現状のようなスタイルで「このバッグ、宝物なの」と言っていただけるのが理想です。
――

――昨今はものに溢れ「宝物を手に入れたい」という感覚を失いかけているかもしれないですね。

ファストファッションやサブスクなどにより、ものを所有することを避けたり、簡単に処分する風潮がありますね。がんばって手に入れる喜びや、ひとつのものを大切にして子や孫に譲っていくという文化もなくしたくないなと思います。私の作品がそうなったら本望ですね。
1
2
蓬莱美紀
「ashの森へようこそ」という活動名でハンドメイドの鞄や小物を販売。
森や動物を守る活動への寄付などもしながら、動物モチーフの作品を多く制作している。
渋谷ヒカリエや小田急百貨店など、都内を中心にリアル店舗での販売も。
▶ブログ:https://blog.goo.ne.jp/ash-ryu
▶マルシェル出品物一覧:https://marchel.goo.ne.jp/ash-ryu