2021-05-10 09:50:31 インタビュー
――「ashの森へようこそ」という活動名があたたかい雰囲気で特徴的ですね。由来を教えていただけますか?
――ではashさん、森を守る運動に興味をもったきっかけは何だったのでしょうか?
以前アパレル業界で働いていたときに、膨大な量の生地の廃棄が問題視されていることを肌で感じていました。その頃から環境問題に関心をもちはじめましたが、実際はなかなか森などへ出向き運動に参加することができませんでした。そこで、作品の売上の一部を活動団体へ寄付するようになったんです。――素晴らしい取り組みですね。ashさんの作品からも動物たちへの愛情を感じます。バッグデザイナーとして活動されるまでの経緯を教えていただけますか?
――彫金師からバッグデザイナーへ転身されたのですね。中国でバッグを制作されるようになったきっかけは何だったのでしょうか?
当初は彫金を再開するつもりで、中国にも道具を持っていきました。ところが中国天津(てんしん)の布市場で色鮮やかな生地を目にし、色彩の魅力に目覚めてしまったのです。天津はプリント生地の生産が盛んで、華やかでポップな色とりどりの生地が手軽に手に入ります。それらを目にして「なんてキレイなんだろう!」と感激しました。――ashさんの作品は刺しゅうも多く施されていますが、どのように修得されたのですか?
――とても手の込んだつくりになっているのですね。
バッグの中には「笑顔のもとになりますように」という気持ちを込めて、モチーフにした動物の名前やキャラクターを設定した手書きのプロフィールカードを入れているんですよ。――それは、オンリーワンの特典ですね。カードの詳細をうかがいたいところですが、ご購入されたお客様だけの"届いてからのお楽しみ"ですね。
作品のモチーフになっている動物の表情やしぐさなどから、思わず「クスっ」と笑っていただけそうな性格や行動、くせ、好みなどを設定しています。決してポジティブな内容ばかりではなく、皆さんに「こういう人いるよね」とか「こういうことあるよね」と共感していただけるようなものが多いかもしれません。――ashさんのお気持ちはきちんと伝わっていますね。ほかにも何か印象的なエピソードはありますか?
――次の活動への原動力になりますね。
実は以前デザインをまねされてしまったことがあるんです。ブログやイベントで作品を公開しているので、ある程度は仕方のないことだと思いますが……バッグの表面だけでなく内側まで同じデザインで、とても悲しい気持ちになりました。それ以来、誰にもまねできないようなものを作ると心に決め、現在のような動物モチーフのバッグを制作するようになったのです。――悔しいご経験をバネに、今のスタイルが確立されたのですね。活動を続けるコツはあるのでしょうか?
「これが私の最後の作品!」と思えるほど満足できるものが制作できたら、作家として「もう思い残すことはない」と思えるのかもしれません。でも、ものづくりをする人にそんなときは永遠に訪れないと感じています。――今イチオシの商品を教えてください。
――"オチ"まであって物語が完結しているので、「そういうことか!」と笑顔になりますね。
――今後の目標はありますか?
これまで以上に販売にも力を入れていきたいです。デザインやコンセプトを考えたり、作ることに比重が傾きすぎてしまう傾向があるので……。今後もイベントやSNSなどを活用しながら、皆さんに楽しんでいただけるような作品を制作、販売し続けていきたいですね。委託販売をしてくださるお店や、催事のご依頼もお待ちしています!――制作と販売のバランスは難しいですね。制作に比重がかかってしまうと、価格設定も難しいのではないでしょうか。
デザインやつくりにこだわっているので、どうしても価格が高くなってしまいます。ですが、装飾を少し減らしポケットを増やして機能性を重視したり、ミシンを使った機械刺しゅうを加え材料費や工数をおさえたりして、価格は下げられるかもしれないと考えています。――昨今はものに溢れ「宝物を手に入れたい」という感覚を失いかけているかもしれないですね。
ファストファッションやサブスクなどにより、ものを所有することを避けたり、簡単に処分する風潮がありますね。がんばって手に入れる喜びや、ひとつのものを大切にして子や孫に譲っていくという文化もなくしたくないなと思います。私の作品がそうなったら本望ですね。