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伝統工芸職人グループ「凛九」メンバーが語る!「やめるのは簡単」それでも続ける“家業”としての伝統工芸

――はじめに、おふたりがこの世界に足を踏み入れたきっかけを教えてください。
伝統工芸の最前線で活躍する女性職人グループ「凛九」のメンバーに、さまざまなテーマでお話をうかがう対談企画。第2弾は「長い歴史のある家業を継いで職人になった2人」です。

古くから残る伝統工芸を受け継ぐことは、綿々と続く歴史を後世に紡いでいくことでもあります。そこに込められた想いや苦悩とは……。伊賀組紐職人の藤岡かほりさん、尾張七宝・七宝焼(しっぽうやき)職人の田村有紀さんに、その重みややりがい、「凛九」の活動で得たものなどについて、お聞きしました。

――はじめに、おふたりがこの世界に足を踏み入れたきっかけを教えてください。

――はじめに、おふたりがこの世界に足を踏み入れたきっかけを教えてください。
藤岡:三重県伊賀市にある「藤岡組紐店」で主に帯紐を作っています。その家の長男である夫との結婚がきっかけでした。母がよく着物を着ているのを目にしていたので「帯締め」の存在は知っていました。しかし材料が「絹糸」ということや、それが伊賀で作られ伝統工芸品であることも知らなかった上に、伊賀市の位置すら分からないところからのスタートでした。

田村:私は明治16年から続いている「田村七宝工芸」の窯元の長女として生まれました。両親、祖父ともに七宝作家で、いわゆる「美術一家」です。美術大学を卒業後、異なる業種で経験を積みましたが「やはり七宝焼を盛り上げたい」という気持ちが強まり、今に至ります。

――はじめに、おふたりがこの世界に足を踏み入れたきっかけを教えてください。

――おふたりとも梶浦明日香さん(伊勢根付職人、「凛九」代表)に誘われ「凛九」に参加したそうですね。当時はどのような心境でしたか?

藤岡:人見知りということもあり、当初は断ろうと悩んでいたくらいで……(笑)。
でも他県から嫁いできて制作に励み、人との会話が減っていた時期でもありました。「殻を破りたい」という思いで参加を決めました。

田村:私も同じく迷っていましたね。元々グループ活動が苦手で協調性もないですし……(笑)。それに「個人だと弱いけれど、集まって強くなる」というグループの形は望んでいなかったのです。でも梶浦さんとじっくり話をして、「個々にしっかりと実力があり、高めあえるグループ」であればと意見交換、意気投合し共に良いチームの形を作っていこうと参加することにしました。
――おふたりとも梶浦明日香さん(伊勢根付職人、「凛九」代表)に誘われ「凛九」に参加したそうですね。当時はどのような心境でしたか?

――参加前は不安なことも多かったのですね。実際に活動をスタートして、いかがでしょうか?

藤岡:よい意味で、こんなに続くとは思っていませんでした。毎年開催させていただく展示会などもあり、機会に恵まれて非常にありがたいです。団結力も増し、それぞれの立ち位置や役目が定まってきた感じがしますね。

田村:まさか徳川美術館で2回も展示をさせてもらえるとは思っていなかったので、正直驚いています。たくさんの方が協力してくださり、活動の幅が広がりました。すごくよい方向に向かっていると思います。

――「凛九」の活動を通してメンバー同士の絆も生まれているんですね。お互いの尊敬できる部分を教えてください。

田村:藤岡さんはすごく丁寧で細やかな人です。私は直感や感覚的で動くことが多く、メンバーとのやり取りでも「こんな一言をかければよかった」と後悔することがあるんです。藤岡さんは一歩先を考えた「気遣いの言葉」を自然にかけてくれて、ハッと気づかされることが多いですね。

藤岡:そんな風に思ってくれていたなんて、すごくびっくり(照)。うれしいです。

田村:ちょっとしたやり取りでも「なるほど」と思う重要な一言をさりげなくかけてくれるんです。もちろん作品も素敵で、個人的に欲しいものがたくさんあります。
――「凛九」の活動を通してメンバー同士の絆も生まれているんですね。お互いの尊敬できる部分を教えてください。
――グループでの活動だからこそ生まれる気づきですね。藤岡さんはいかがでしょうか?

藤岡:田村さんは、多彩な活動に力を注げる「情熱の塊」です。自分の意見をきちんと言う一方、意見がまとまらないときには、全体を俯瞰してまとめてくれる冷静さもあります。制作の面では、伝統的な七宝焼を「私たちが今身に付けたいもの」に昇華させていると感じます。実は以前、わが家の愛犬をモチーフにした七宝焼をいただきました。
――「凛九」の活動を通してメンバー同士の絆も生まれているんですね。お互いの尊敬できる部分を教えてください。
伝統を守りつつも、その先の使う人の顔を思い制作されていることが伝わり感動しましたね。
――「凛九」の活動を通してメンバー同士の絆も生まれているんですね。お互いの尊敬できる部分を教えてください。

――グループの中でもおふたりは“家業”を受け継いでいるという特徴がありますが、“家業”だからこその「難しさ」はあるのでしょうか?

――グループの中でもおふたりは“家業”を受け継いでいるという特徴がありますが、“家業”だからこその「難しさ」はあるのでしょうか?
田村:「後継者不足」は切実な問題として実感しています。田村七宝工芸は、七宝焼発祥の地、愛知県あま市七宝町にあります。昔は町に100軒以上窯元がありましたが、今は8軒しか残っていません。1人だけ成功しても業界に未来はないと思っています。後継者問題を解決できるよう、自分のことだけを頑張るのではなく、七宝焼が置かれている環境から変えていかなければなりません。


藤岡:後継者問題は組紐でも同じです。夫が家業を継ぎたいと先代に伝えた際、「今後は難しくなるから」と断られたことがあるほどです。しかし、「代々続いてきた手仕事を受け継いでいきたい」という強い思いがあり継承しました。伝統工芸はやりたくても気軽にできるものではありません。好きなことを家業として仕事にできることはとても幸せなことだと思って、これからも続けていきたいです。
――グループの中でもおふたりは“家業”を受け継いでいるという特徴がありますが、“家業”だからこその「難しさ」はあるのでしょうか?

――長い歴史があるからこそ、「絶やしてはいけない」という使命感もあるのですね。伝統工芸品は昔と比べて販路が増えたと思うのですが、そのあたりの取り組みはいかがでしょうか?

藤岡:2020年からネット販売を開始、催事で伺えない地域の方にも手に取っていただけるようになり、またSNSを始めたことにより多くの方に知っていただけているように感じます。新たなお客様への認知拡大や、取材の依頼をいただくことにもつながっています。はじめてよかったと感じますし、新たな可能性にもつながっていると思います。業界内にも広めていきたいですね。

――さまざまな形で伝統工芸と向き合う中で、「やりがい」を感じる点を教えてください。

田村:伝統工芸品を多くの人が手に取ることで、さまざまな切り口から文化や長い歴史に触れることができます。それはとても「心が豊かになること」ですよね。精神的な観点から見ても、私はものづくりを「人間にとって必要な行為」と考えています。それを自分の手の中で、0から100まで作り上げることができる喜びがあります。

藤岡:私は制作をはじめた当初、工房にこもり作るだけの日々を送っており、どこか消化不良でした。販売の場に出て、使ってくださる方から直接「よかったよ」と声をかけてもらえることで、やりがいを感じています。やめるのは簡単ですが、一からはじめていくのはとても大変です。だからこそ、これからも続けていきたいですね。

――マルシェルに参加してみて、どのような変化がありましたか。

田村:作品にストーリーを添えて投稿できるのが面白いですね。メンバーのブログを読めるのも楽しいです。個人のバックグラウンドや作品にまつわるストーリーを知ることができ、作る側としてもありがたいです。

藤岡:オンライン販売だけだと、作品のストーリーを伝えきれないことがあります。ブログと連携していることで、思いの丈を伝え、お客さまにじっくり読んでいただける機会ができました。

――最後に、今後やりたいことや展望を教えてください。

田村:伝統工芸を大切にしつつ、アートにも領域を広げたいです。伝統工芸としての作品、自分の感性で作るアート作品、商品としての作品……それぞれ違います。全てに本気で取り組み、視野を広げて新しい表現方法を模索していきたいです。
――マルシェルに参加してみて、どのような変化がありましたか。

藤岡:以前、展示会でタペストリーを作り、よい反響をいただきました。インテリアとして扱ったことはなかったので新鮮でしたね。これからは着物を着ない方でも組紐を身近に感じられるような作品作りに取り組んでいきたいです。
――マルシェルに参加してみて、どのような変化がありましたか。


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